いちごの育て方|プランターで室内栽培を成功させるコツ

いちごの育て方|プランターで室内栽培を成功させるコツ

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いちごの育て方をプランターで室内栽培する方法について、初心者でも失敗しないポイントを詳しく解説します。自宅で新鮮ないちごを収穫したいと考えている方は多いものの、プランターを室内のどこに置くべきか、いちごの苗の水やり頻度はどのくらいが適切なのか、イチゴを甘く育てるにはどうすればよいのかなど、疑問は尽きません。

特にプランター栽培の初心者にとって、適切な土や肥料の選び方から日々の管理方法まで、把握すべき情報は多岐にわたります。いちごは本来屋外での栽培に適した植物ですが、環境を整えれば室内でも十分に育てることが可能です。

この記事では、プランターを使った室内でのいちご栽培について、苗の選び方から収穫まで、実践的なノウハウを体系的にまとめました。日当たりの確保方法、水やりのタイミング、受粉作業の必要性など、成功のカギとなる要素を丁寧に解説していきます。

この記事でわかること

  • 室内でプランター栽培するいちごの基本知識と適した品種
  • プランターの置き場所や土・肥料の選び方などの準備方法
  • 水やり頻度や日光確保など日々の管理ポイント
  • 受粉作業や冬の管理など収穫までの実践テクニック
目次

いちごの育て方|プランターで室内栽培は可能?

いちごの育て方|プランターで室内栽培は可能?

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  • 室内でいちごをプランター栽培するメリット
  • いちごを植えたプランターはどこに置くべき?
  • 室内栽培に適した品種の選び方
  • プランター初心者向けの土と肥料の準備
  • いちごの苗の植え替え手順とタイミング

室内でいちごをプランター栽培するメリット

いちごはバラ科オランダイチゴ属の植物です。農学的には野菜として分類されることが一般的ですが、植物学的な観点では、私たちが食べている部分は肥大した花托(花床)であり、表面の粒々が真の果実にあたります。本来は春から初夏にかけて収穫する作物で、一般的には屋外での栽培が推奨されていますが、環境を適切に整えることで室内でのプランター栽培も十分に実現できます。

室内栽培の最大のメリットは、天候に左右されずに安定した環境で育てられる点にあります。雨や雪が直接当たらないため、病気のリスクを大幅に軽減できるのです。特に梅雨時期や台風シーズンには、屋外栽培では株が傷んだり病害が発生しやすくなりますが、室内であればこうした心配が少なくなります。

また、プランター栽培は移動が容易なため、日当たりの良い場所へ自由に配置を変えられます。季節や時間帯に応じて最適な位置に移動させることで、いちごの生育に必要な日光を効率的に確保することが可能です。

室内栽培では、鳥からいちごの実を守りやすいというメリットもあります。屋外では熟した実が鳥に狙われることが多いですが、室内であれば収穫まで安心して見守ることができます。

ただし、室内栽培にはデメリットも存在します。窓越しの光は直射日光に比べて質が劣るため、甘く大きな実をつけるには工夫が必要です。日本の冬季は日照時間が短くなるため、LED植物育成ライトなどで補光することも検討する価値があります。また、室内では自然な受粉が期待できないため、人工授粉が必要になる点も留意しておく必要があります。

さらに、エアコンの風が直接当たると乾燥しすぎて株が傷む可能性があるため、置き場所には十分な配慮が求められます。プランターの底から水が染み出ることもあるので、受け皿の用意も忘れてはなりません。

いちごを植えたプランターはどこに置くべき?

プランターの置き場所は、いちご栽培の成否を大きく左右する重要な要素です。日当たりの良い窓際が最も理想的な配置場所となります。おいしいいちごを収穫するためには、1日のうち太陽の光に当たる時間ができるだけ長い場所を選ぶことが望ましいといえます。

南向きの窓際であれば、午前中から午後にかけて長時間の日光を取り込めるため、いちごの光合成を促進し、甘い実をつけることにつながります。東向きや西向きの窓でも栽培は可能ですが、日照時間が短くなる分、実の甘さや大きさに影響が出る可能性があります。北向きの窓は日照が不足しがちなため、可能な限り避けた方が賢明です。

冬季など日照が不足しやすい時期には、昼白色LEDや植物育成用LEDを用いた補光も有効です。LED照明を株の上方に設置し、1日10~12時間程度照射することで、光合成を補助できます。ただし、照明の出力や機種により適切な距離が異なるため、葉焼けを避けるために調整が必要です。光合成に有効な光量の目安としては、PPFD(光合成有効光量子束密度)で200~400μmol/㎡/s程度が推奨されています。

エアコンの風が直接当たる場所は避けてください。過度の乾燥を招いたり、葉が傷んでしまう原因となります。観葉植物と同様に、空調設備からの送風には十分な注意が必要です。

プランターを床に直接置くのではなく、スタンドや台の上に設置すると風通しが良くなり、病気の予防効果が高まります。また、室内でもコバエなどの害虫被害を軽減できるため、可能であれば高さのある台を活用することをおすすめします。

室内の温度管理も重要なポイントです。いちごは寒さに強い植物ですが、室温が高すぎると休眠期に入れず、適切な花芽分化が行われない可能性があります。冬場は暖房の効きすぎに注意し、夜間は8~12度程度の環境を保つよう心がけましょう。ただし、10度未満の低温が長期間続くと生育が停滞することもあるため、地域や住環境に応じた調整が必要です。

ベランダや庭先への移動も検討

もし室内の日当たりが十分でない場合は、天気の良い日にベランダや庭先へプランターを移動させることも一つの方法です。直射日光に当てることで光合成が促進され、実の糖度向上につながります。ただし、室内から急に強い直射日光に当てると葉焼けを起こすリスクがあるため、数日かけて順化させることが大切です。まずはレースカーテン越しの光に慣らし、次に半日陰、最後に直射日光へと段階的に移行させましょう。また、雨や雪に当たると株が傷む原因となるため、天候の変化には注意を払い、必要に応じて室内へ戻すようにしてください。

室内栽培に適した品種の選び方

室内栽培に適した品種の選び方

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いちごには大きく分けて一季なり品種と四季なり品種の2種類が存在します。一季なり品種は春に一度だけ収穫でき、四季なり品種は春と秋、あるいは条件が整えば長期間にわたって収穫が可能です。

室内栽培の場合、四季なり品種は日長の影響を受けにくいため、補光と組み合わせることで長期間の収穫が期待できます。一方、一季なり品種は春の一定期間に集中して収穫する特性があり、屋外での露地栽培に適した性質を持っています。

栽培の難易度については、一季なりと四季なりで管理のポイントが異なるだけで、一概にどちらが簡単とは言い切れません。ご自身の栽培環境や収穫の希望時期に応じて選択することが大切です。

分類 品種名 特徴
一季なり とちおとめ 甘みと酸味のバランスが良く、育てやすい品種
一季なり 紅ほっぺ 大粒で香りが強く、見た目も美しい人気品種
一季なり 章姫(あきひめ) 柔らかくて多汁、濃厚な味わいが特徴的
四季なり エラン 家庭菜園向けで、プランター栽培に適した品種
四季なり なつあかり 暑さに強く、春から秋まで長期収穫が可能

四季なり品種の入手性は地域や時期によって異なる場合がありますので、お近くの園芸店やホームセンターで取り扱い状況を確認されることをおすすめします。

とちおとめは栽培適応性が高く、プランター栽培でも安定した収穫が期待できます。甘みと酸味のバランスが取れた味わいで、生食はもちろんジャムなどの加工にも適しています。

紅ほっぺは果実が大きく育ちやすい品種で、見た目の美しさも魅力です。香りが豊かで食味に優れているため、家庭菜園で人気があります。ただし、やや病気に弱い傾向があるので、風通しの良い環境を保つことが大切です。

章姫は果実が柔らかく傷みやすいため、市場にはあまり流通していませんが、家庭菜園ならではの品種といえます。採れたてのみずみずしい食感を楽しめる点が最大の魅力です。

苗を購入する際は、葉の色が濃く、葉数が多いものを選びましょう。クラウン(葉のつけ根部分)が太くしっかりしている苗は、健全に育っている証拠です。病気や虫食いの跡がないかも確認してください。

プランター初心者向けの土と肥料の準備

いちご栽培において、土選びは非常に重要な要素です。野菜用の培養土を使用するのが最も手軽で確実な方法といえます。市販の培養土には、いちごの生育に必要な栄養素があらかじめ配合されているため、初心者でも失敗が少なくなります。

自分で土を配合する場合は、赤玉土6、腐葉土3、バーミキュライト1の割合を基本とします。水はけと保水性のバランスが取れた土壌を作ることが、健全な根の発育につながるのです。

土の酸度調整も大切なポイントです。いちごは弱酸性の土壌を好むため、pH5.5~6.5程度に調整することが望ましいとされています。酸度が強すぎる場合は苦土石灰を混ぜて中和し、植え付けの2週間前までに準備を整えておきましょう。

肥料の選び方と使用方法

元肥として使用する肥料は、緩効性の化成肥料や有機肥料が適しています。土10リットルあたり30グラム程度を目安に、プランターの土とよく混ぜ合わせます。元肥入りの培養土を使用する場合は、この工程は不要です。

追肥は植え付けから約1カ月後を目安に開始し、その後は月に1回程度のペースで与えます。収穫が終わるまで継続的に施肥を行うことで、株の生育を促し、甘く大きな実をつけることができます。

有機肥料を使用すると、暖かくなった際に土の表面に白い菌糸のようなものが発生する場合があります。これは酵母菌などの有用微生物で害はありませんが、見た目が気になる方は、5センチ程度土を掘り起こして肥料を土中に埋め込むとよいでしょう。

液体肥料を併用すると、さらに効果的です。植え付け1週間後から、500倍に薄めた液肥を週に1回程度与えることで、栄養供給を安定させることができます。ただし、液肥を与える際は、プランターの底から水が流れ出るまでたっぷりと灌水し、余分な塩類を洗い流すことが大切です。月に1回程度は清水だけで灌水を行い、塩類の蓄積を防ぎましょう。

いちごの苗の植え替え手順とタイミング

いちごの苗の植え替え手順とタイミング

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いちごの苗を植え付ける適期は、温暖地基準で秋植えの場合は10月、春植えの場合は2月中旬から3月中旬とされています。寒冷地や高冷地では時期をずらす必要がありますし、室内栽培の場合はポット苗を周年入手して定植することも可能です。秋植えは植え付けから収穫までの期間が約半年と長いため、実がたくさん収穫できる大きな株に育ちます。

春植えは植え付けから収穫までの期間が2~3カ月と短く、すぐに実の収穫が楽しめる点が魅力です。ただし、秋植えに比べると収穫量は少なめになる傾向があります。

プランターと苗の数の目安

土10リットルに対して2~3苗が適切な植え付け数です。例えば、幅65センチのプランター(土量10リットル)であれば3苗が目安となります。苗と苗の間隔は20~25センチ程度を確保し、風通しを良くすることで病気のリスクを低減できます。

プランターは深さ15センチ以上のものを選ぶと、根がしっかり張ることができます。プランターの底には鉢底石を底面が隠れる程度に敷きます。これにより排水性と通気性が向上し、いちごの生育に適した土壌環境が整います。鉢底ネットを敷いてから鉢底石を入れると、水やりの際に石が流れ出るのを防げます。

植え付けの具体的な手順

まず、準備した培養土をプランターに入れますが、このとき鉢のフチいっぱいまで土を入れないようにします。フチから約2センチ低い位置までとどめることで、水やりの際に土がこぼれるのを防げます。このスペースをウォータースペースと呼びます。

苗をポットから取り出し、クラウン(葉のつけ根部分)が土に埋まらないよう、地表面より少し高めに植えるのがコツです。クラウンが土に埋まると腐りやすくなり、株全体が枯れる原因となります。クラウンの上部が地表面と同じか、わずかに出ている程度に調整しましょう。

苗を配置する際は、ランナー(細いヒモのような茎)がついていた方向を考慮します。ランナーがついていた側を外側に向けて植えると、後に実がプランターの外側に垂れ下がり、収穫がしやすくなります。

植え付け後は、苗を土になじませるためにプランターの底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えます。根と土が密着するよう、水やりは慎重に行ってください。ただし、株に直接水がかからないよう注意が必要です。

植え付けが完了したら、土の表面をワラやバークチップ、ヒノキチップなどでマルチングします。マルチングには雑草の発生を防いだり、水分の蒸発を抑えたり、病害虫の発生を防ぐ効果があります。いちごの株は乾燥に弱いため、マルチングによる保湿効果は特に重要です。

プランターで室内でいちごを育てる実践ポイント

プランターで室内でいちごを育てる実践ポイント

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  • いちごの苗の水やり頻度は?
  • イチゴを甘く育てるには?日光確保のコツ
  • 冬の管理方法と室内環境の調整
  • 受粉作業は必要?人工授粉の方法
  • 栽培で注意すべき病気と害虫対策

いちごの苗の水やり頻度は?

水やりはいちご栽培において最も重要な日常管理の一つです。表土が乾いたらたっぷりと水を与えるのが基本原則となります。プランターの底から水が溢れ出るくらいに与えることで、土中の古い空気が押し出され、新鮮な空気と入れ替わります。

いちごの株は乾燥に弱い植物であるため、水切れには十分な注意が必要です。特にプランター栽培では土が乾燥しやすく、水やりのタイミングを誤ると株を傷めてしまう可能性があります。

水やりのタイミングを判断する方法

土の乾き具合を確認する最も確実な方法は、指を土に1~2センチ差し込んで湿り気を確認することです。表面が乾いていても、内部がまだ湿っている場合は水やりを控えます。また、プランターを持ち上げてその重さで判断することも有効です。軽くなっていれば水やりのサインといえます。

割り箸を使う方法も有効です。割り箸の先端を土の中に約5センチ程度埋めておき、乾燥を確認する際に抜いて、埋まっていた部分の上から約1センチの部分が乾いているか確認します。乾いていれば水やりのサインです。

水やりチェッカー「サスティー」などの道具を活用すると、目視では分かりにくい土の水分状態を色の変化で確認できます。初心者の方には特に便利なアイテムといえるでしょう。

季節ごとの水やりのポイント

冬の間、いちごの苗は休眠状態に入る場合があり、土から吸い上げる水の量が少なくなります。土の状態チェックを怠ると、いつの間にか土が乾燥しすぎて苗が傷む原因となるので注意してください。寒い時期は土の湿り気を確認しながら水やりを行います。

年が明けて春が訪れ、暖かくなるといちごの苗の成長はぐんと進み、水の必要量が増えます。特に花や実がつく頃の水やりは非常に重要です。ただし、毎日水やりをする必要があるかどうかは、土の乾燥状態を確認してから判断してください。環境によっては過湿になるリスクもあります。

水を与える時間帯は午前中がおすすめです。夕方以降に水やりをすると、夜間の冷え込みで根が傷む可能性があります。また、真昼の暑い時間帯も避けた方が賢明です。

水やりの際の注意点

水やりの際、水が株にかかると病気の原因となるため、株に水がかからないよう株元に静かに与えることが大切です。また、水を与えた時に跳ねた土が株に付くと、同じく病気の原因となります。そっと水を与え、土の跳ね返りを最小限に抑えましょう。

プランターの底に受け皿を敷いている場合、水が溜まったままにしないよう注意してください。受け皿に水が残っていると根腐れの原因となるため、水やり後は必ず受け皿の水を捨てることを習慣づけましょう。

イチゴを甘く育てるには?日光確保のコツ

いちごを甘くするコツは、おひさまによく当てることです。植物は光合成によって糖とでんぷんを作り出すため、日光と水と酸素のバランスが取れていることがとても大切なのです。

室内栽培では、窓越しの光は直射日光に比べて質が劣るため、日光確保に工夫が必要です。可能な限り長時間、日光が当たる場所にプランターを配置しましょう。

日光を最大限に活用する方法

カーテンやブラインドを開け放ち、できるだけ多くの光を室内に取り込むようにします。レースカーテン越しでも光は透過しますが、直接光が当たる方が光合成の効率は高まります。

プランターの向きを定期的に変えることも効果的です。同じ向きで固定していると、一方向からしか光が当たらず、株全体に均等に光が届きません。数日おきにプランターを180度回転させることで、株全体に満遍なく日光を浴びせることができます。

天気の良い日は、ベランダや庭先へプランターを移動させることも検討しましょう。直射日光に当てることで光合成が促進され、実の糖度向上につながります。ただし、室内から急に強い直射日光に当てると葉焼けを起こすリスクがあるため、数日かけて順化させることが大切です。まずはレースカーテン越しの光に慣らし、次に半日陰、最後に直射日光へと段階的に移行させましょう。また、雨や雪に当たらないよう天候の変化には注意してください。

補光の活用

冬季など日照が不足しやすい時期には、昼白色LEDや植物育成用LEDを用いた補光が有効です。照明を株の上方に設置し、1日10~12時間程度照射することで、光合成を補助できます。ただし、照明の出力や機種により適切な距離が異なるため、葉焼けを避けるために調整が必要です。光合成に有効な光量の目安としては、PPFD(光合成有効光量子束密度)で200~400μmol/㎡/s程度が推奨されています。

温度管理も重要

いちごの花粉発芽や生育には、適切な温度管理も欠かせません。日中の温度は15~25度が望ましいとされています。室温がこの範囲に収まるよう、暖房や冷房を調整しましょう。

ただし、エアコンの風が直接当たる場所は避けてください。過度の乾燥は株を傷める原因となります。また、夜間は8~12度程度を維持することで、昼夜の温度差が生まれ、糖度の高い実がつきやすくなります。ただし、10度未満の低温が長期間続くと生育が停滞することもあるため、地域や住環境に応じた調整が必要です。

肥料による糖度向上

適切な施肥も甘い実をつけるためには重要です。リン酸とカリウムを多く含む肥料は、実の肥大と糖度向上に効果があるとされています。追肥の際は、窒素・リン酸・カリウムのバランスが取れた肥料を選ぶとよいでしょう。

ただし、肥料の与えすぎは逆効果です。窒素分が多すぎると葉ばかりが茂り、実つきが悪くなります。肥料のパッケージに記載された使用量を守り、適量を心がけてください。

冬の管理方法と室内環境の調整

冬の管理方法と室内環境の調整

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屋外での家庭菜園の場合、いちごは10月中旬から下旬ごろに休眠に入ります。室内栽培でも、気温が下がってくると休眠期を迎えることがあります。休眠が最も深くなるのは11月中旬から下旬ごろです。

いちごにとって休眠は、厳しい冬を乗り切るための自衛手段といえます。地上部はできるだけ小さく、また地に這った姿で寒さをしのぎながら、地下部の根には養分を蓄えて春に備えているのです。

休眠中の特徴と対応

いちごは屋外の寒冷期において、葉が赤くなって枯れていくことがあります。これは低温による休眠の一つの兆候ですが、室内栽培では強い休眠に入らないケースも多く見られます。葉の赤化は低温だけでなく、リン酸欠乏などの栄養障害や、過剰施肥による根の障害でも生じることがあるため、気温や施肥状況、新葉の動きなども観察しながら総合的に判断することが大切です。適切な培養土と施肥を行っていれば、低温が主な要因となりやすいでしょう。

枯れた葉や黄色くなった葉は株元から切り取り、風通しを良くしておきましょう。

通常、冬に花は咲きませんが、秋の気象条件により花が咲いてしまうことがあります。プランター栽培で冬に咲いた花には良い実がつかないことが多いので、株の消耗を防ぐために花は摘み取ります。継続的に平均気温が10度以上になる4月以降、咲いた花に実をならせましょう。

休眠中も極端な乾燥が続く場合には水やりが大切です。完全に水やりを止めてしまうと、根が乾燥しすぎて傷む可能性があります。土の状態を定期的に確認し、乾きすぎていれば適度に水を与えてください。

室内温度の管理

室内栽培では、暖房により室温が高くなりすぎることがあります。いちごは一定期間の低温に遭遇することで休眠が破れ、春に向けて正常な花芽分化が行われます。暖房の効きすぎた部屋では、この低温要求が満たされず、花が咲かなかったり実つきが悪くなったりする可能性があります。

おおよその覚醒時期は年が明けた1月中旬以降からとされています。天候の具合により、覚醒する時期は多少前後しますが、この時期に向けて徐々に日照時間を増やし、株の目覚めを促してあげましょう。

北日本での冬季管理

北日本など朝晩が氷点下になるほど寒い地域にお住まいの場合、気温が下がる朝晩は室内の暖かい場所で管理してあげてください。高さのある段ボール箱などを被せて保温しておくのも効果的です。

いちごは低温には強い野菜ですが、あまりに霜が何度も当たると葉を傷めたり、プランター内の土が冷えすぎて凍結する可能性があります。極端な低温から株を守る工夫が必要です。

受粉作業は必要?人工授粉の方法

いちごが大きくキレイな実をつけるためには受粉が必要です。受粉は、植物に実がなることを意味する結実のために重要な工程といえます。これがうまくいかないと、花はたくさん咲くのに実がならなかったり、実が奇形になったりするトラブルにつながります。

屋外栽培では、ミツバチやチョウなどの昆虫が自然に受粉を行ってくれます。しかし、室内栽培では昆虫が訪花しないため、人工授粉が効果的です。マンションのベランダや住宅街で昆虫が少ない環境でも、同様に人工授粉を行うことが推奨されます。

受粉のタイミング

いちごの花は両性花で自家受粉が可能ですが、開花直後から数日以内に受粉を行うのが効果的です。開花から5日以上経過すると、雄しべ、雌しべともに受精能力が低下し始め、受精できた場合も奇形果の発生確率が高くなる傾向にあります。

受粉作業は、花粉が乾いている日中、特に晴れた日の午前中に行うのが最も効果的とされています。

いちごの開花時期は品種によって異なります。一季なり品種は春の3月中旬から4月に開花し、四季なり品種は5月から6月と10月から11月、あるいは条件が整えば周年的に開花時期を迎えることもあります。自分が育てている品種の特性を把握しておきましょう。

人工授粉の具体的な方法

方法は簡単です。いちごの花が咲いたら、綿棒か毛先が柔らかい筆で花の中心をくるりと撫でます。黄色い花粉を花の中心にくっつけるイメージで、やさしく撫でてあげてください。

全ての雌しべに満遍なく花粉を付着させることが重要です。受粉が不十分だと形がいびつな実になってしまうため、丁寧に作業を行いましょう。一つの花に対して、円を描くように数回撫でることで、確実な受粉が期待できます。

硬い道具を使うと雌しべを傷つける恐れがあるため、綿棒や柔らかい筆の使用が推奨されています。

受粉の成功を確認する方法

受粉が成功した場合、雌しべの土台となっている花托(かたく)と呼ばれる部分が膨らんで果肉となり、雌しべの子房部分が肥大して粒々の痩果(果実)となります。

うまく受粉できなかった雌しべがある場合、子房は膨らまないため、果肉が部分的に大きくなっていびつな形になってしまいます。これが奇形果ができる原因です。花が咲いてから1週間程度経過すると、受粉の成否が判断できるようになります。果実の肩が落ちたような形状になっている場合は、受粉不良のサインです。

栽培で注意すべき病気と害虫対策

栽培で注意すべき病気と害虫対策

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いちご栽培で初心者が最も注意すべきポイントの一つは、ランナーの管理です。いちごの花の開花がはじまる時期と同じくして、細いヒモのような茎(ランナー)が次々に発生します。

ランナーは新しいいちごの株を増やすための茎なので、実を成らせるためにはランナーの存在は適していません。ランナーに果実の栄養が奪われてしまわないように、ランナーは株元の近くで切り取るようにしてください。

開花、結実期に出てきたランナーは、収穫が終わるまではこまめに摘み取ります。ランナーを切ることで、株に余分な負担をかけずに栄養分を果実に回して良い実をならすことにつながります。根元を傷つけないように、根元から少し離れた所で切ると、ランナーは次第に枯れていきます。ただし、収穫後に新しい苗を増やしたい場合は、親株の体力を見ながら一部のランナーを残して子株を育てることも可能です。

病気と害虫への対応

いちごの病気は、主にうどんこ病、炭そ病、灰色かび病などがあります。日当たりや風通しが悪く、高温多湿になると病気が出やすくなるので、プランターの置き場所に配慮が必要です。

うどんこ病は、糸状菌(真菌)による病害で、葉に白い粉状のものが付着します。主に気温が20度前後の時期、春や秋に発生しやすくなります。初期・軽症の段階であれば、見つけたらふき取って取り除くことができますが、進行した場合は発病葉を除去し、風通しを改善することが大切です。また、過湿や葉濡れを避けるため、水やりの際は葉に水がかからないよう注意しましょう。葉の裏も忘れずにチェックしてください。

灰色かび病は、花や果実に発生しやすい病害です。開花から結実期にかけて過湿や葉濡れ、密植が主な原因となります。予防のため、この時期は葉面への散水を避け、咲き終わった花殻はこまめに除去しましょう。

室内栽培でのいちごの害虫には、アブラムシ、ハダニ、コナジラミ、アザミウマ(スリップス)などが挙げられます。アブラムシは繁殖力が強いため、早期発見・早期対応が重要です。見つけ次第、手で取り除くか、水で洗い流すなどの対処を行いましょう。

物理的な防除方法

室内栽培では、農薬を使わない物理的な防除方法が推奨されます。黄色粘着トラップを設置することで、コナジラミやアブラムシなどの飛翔性害虫を捕獲できます。また、アザミウマ(スリップス)には青色粘着トラップが効果的です。葉にシャワーで水をかけて害虫を洗い流すことも有効な手段といえます。

風通しを改善することで、病気の発生リスクを大幅に低減できます。葉が密集しすぎている場合は、古い葉を適度に摘み取り、株元の風通しを確保しましょう。

枯れ葉の管理

枯れた葉を取り除くと、株元の風通しが良くなり病気にかかりにくくなります。定期的に株の状態を観察し、黄色くなった葉や枯れた葉は早めに取り除く習慣をつけましょう。

収穫のタイミング

一季なり品種を屋外で育てた場合、5~6月には果実が実ります。室内栽培や四季なり品種の場合は、条件により秋や冬にも収穫が可能です。実が大きくふくらんで赤くなったら、収穫の合図です。ヘタのあたりをハサミで切り取って、採れたての味をぜひお楽しみください。

収穫は気温の低い朝に行うのが理想的です。日中のいちごは実の温度が上がっているため、傷みやすくなります。朝の涼しい時間帯に収穫することで、鮮度を保ちながら長く保存できます。

完熟した実は傷みやすいため、収穫後はできるだけ早く食べることをおすすめします。家庭菜園ならではの採れたてのみずみずしさを堪能できるのが、最大の魅力といえるでしょう。

水耕栽培でいちごを育てる応用編

水耕栽培でいちごを育てる応用編

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水耕栽培でいちごを育てる選択肢

土を使わずに栽培する水耕栽培も、いちご栽培の一つの選択肢です。水耕栽培には、土を使わないため室内が汚れにくい、害虫の発生リスクが低い、水と肥料の管理がしやすいなどのメリットがあります。

水耕栽培専用のキットも市販されており、初心者でも比較的簡単に始められます。液体肥料を溶かした水溶液を循環させることで、根に栄養と酸素を供給する仕組みです。

水耕栽培の注意点

ただし、水耕栽培には設備投資が必要です。専用の容器、エアーポンプ、液体肥料など、土耕栽培に比べて初期コストがかかります。また、停電時にはエアーポンプが停止し、根が酸素不足に陥る可能性もあります。

水耕栽培では水温管理も重要です。水温が高すぎると根腐れのリスクが高まり、低すぎると生育が停滞します。適温は15~20度程度とされており、季節に応じた調整が必要です。

水耕栽培でも人工授粉は必要です。また、日光の確保も土耕栽培と同様に重要なポイントとなります。水耕栽培だからといって、管理が不要になるわけではない点に注意してください。

水耕栽培は管理方法が土耕栽培とは異なるため、まずは土を使ったプランター栽培で基本を学び、慣れてから水耕栽培に挑戦するのも一つの方法です。

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総括:いちごの育て方|プランターで室内栽培を成功させるコツ

  • 室内でのいちごプランター栽培は環境を整えれば十分に可能
  • 天候に左右されず病気のリスクを軽減できるメリットがある
  • 日当たりの良い窓際が最適な置き場所で補光も検討する
  • エアコンの風が直接当たる場所は避ける
  • 四季なり品種は室内栽培と相性が良く長期収穫が期待できる
  • 野菜用培養土を使用すると初心者でも失敗が少ない
  • 植え付け適期は温暖地基準で秋植えが10月、春植えが2月中旬から3月中旬
  • クラウンを土に埋めず地表面より少し高めに植えることが重要
  • 表土が乾いたかを指や割り箸で確認してから水やりする
  • 水やり頻度は土の乾燥状態を確認して判断し過湿を避ける
  • 甘い実をつけるには日光をたくさん当てることが最重要
  • 室内栽培では人工授粉が効果的で開花直後から数日以内に実施
  • ランナーは株元から切り取り栄養を果実に集中させる
  • 低温期には葉が赤くなることがあるが気温や施肥状況も確認
  • 収穫は朝の涼しい時間帯に行うと鮮度を保てる
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